ドイツでスマートファクトリーの需要が高まっている。
「スマートファクトリーに代表されるインダストリー4.0、第4産業革命の波が激しく起きています。ドイツだけでも、今年から2025年までに創出される可能性がある付加価値は800億ユーロ(約11兆円)に達すると予測されています」
そう話すのは、ボッシュ・レックスロス社産業用品国際営業部門長エーリッヒ・ロッツ氏だ。ロッツ氏は、「我々は、グローバル企業ボッシュの子会社のひとつとして、主に工場の自動化と関連した製品や技術を開発する企業」と自社について説明。「グループ全体で見たときに、4万5600人の研究者が一日平均18件の特許を出願するほど革新的な企業であり、技術を重視する」とその企業としての力を紹介したと欧米メディアが報じた。
またロッツ氏は、ドイツ連邦情報通信ニューメディア協会(BITKOM)の調査結果を引用し、「2025年までにドイツでは、このトレンドに沿った付加価値の創出額が、自動車部門150億ユーロ(約2兆400億円)、一般産業部門230億ユーロ(約3兆1280億円)、電気・電子部門120億ユーロ(訳1兆6320億円)に達するだろう」と、取材に訪れたメディアに対して話している。
ドイツ企業の研究所、大学がスマートファクトリー関連技術と装置開発に積極的に乗り出している。大企業・中堅・中小企業を問わず、この分野に参入しており、応用技術のメッカ・フラウンホーファー研究機構とアーヘン工科大学、カールスルーエ工科大学などほとんどの工科大学も技術開発に乗り出している。ロボットメーカー・KUKA(ロボットを通じた工場自動化)、レーザー加工企業・トルンプ(レーザー加工機のネットワーク化)、電子部品メーカー・フェニックスコンタクト(柔軟な生産システム)などの企業が代表例だ。
また、シュトゥットガルトのフラウンホーファーIPA(自動化)。ドルトムントのフラウンホーファーIML(物流)、アーヘン工科大学(生産合理化)、ブレーメン大(自動物流システム)なども技術開発に注力している。このほか、ベルリンのフェルディナント・ブラウン研究所、ミュンヘンの国立科学技術アカデミーとBMW、ドレスデンのSAP未来研究所なども合流。彼らはスマートファクトリーのコア技術であるセンサー、ロボット、人工知能、ソフトウェア、セキュリティ技術などを分業・協業により開発中である。
ドイツ企業および研究団体は、機械と機械が対話し、機械と部品が疎通するスマートファクトリーが一時的な流行ではなく、巨大な産業革命に該当すると判断し、総力を挙げてこれに取り組んでいる。ボッシュ・レックスロス社ビジネス開発担当総責任者ハンス・ミカエル・クラウス氏は、メディアの取材に次のように答えている。その言葉は非常に暗示的だ。
「1995年の段階で各種ネットワークに4000万人が接続されていたが、2015年には55億人が接続されています。20年間の間に、新しいネットワークに接続された人の数が100倍以上に増えているのです。各種デバイスを基準にするならば、1997年に600万個が接続されていたが、2015年には66億個が接続されている。これは世界が急変していることを意味します。2025年には500億個のデバイスが互いに接続しあう見通しです」
急変する市場、個々の消費者のニーズの増加、納期、製品ライフサイクルの短期化などにより、スマートファクトリーは、もはや無視できない巨大な流れになっている。ハンス・ミカエル・クラウス氏は「ボッシュ・グループは、全世界の225工場のうち50工場以上の場所でスマートファクトリー試験ラインを稼動中だ」とも付け加えた。
それぞれの研究所や企業は、同分野の技術を単体で開発するものではない。例えば物流分野を研究するフラウンホーファーIMLは、ソフトウェアメーカーのSAP、運送業者のルフトハンザなどの力を合わせて、スマートファクトリーの物流分野の自動化を牽引する。既に開発されたプロジェクトは、続々と企業に移転されはじめている。ドイツは、世界最強を誇る製造業の競争力をより高め、スマートファクトリー輸出を推進しはじめている。