ドローンを“未来の交通手段”として利用しようという動きが活発化している。言い換えれば、空撮や配達にとどまらず、ドローンの性能を高め人を乗せて飛行させようという構想=ドローンタクシー構想だ。
先ごろ、ドイツ・イーボロ社(E-volo)は、ドローンに人を乗せて飛行することに成功した。「ボロコプター(Volocopter)」という名の同社ドローンは、2013年に無人飛行に成功。これまで100回以上のテスト飛行を繰り返した。
初の有人飛行に成功した製品「VC200」は9つのバッテリー、18個の電気モーター、18つの回転翼で構成されている。重量は450㎏である。重量を少しでも減らすため、軽くて丈夫な炭素繊維を素材に使用している。
操縦はその他のドローン同様にジョイスティックを使って行われる。コックピット内に設置されたナビゲーション画面に目的地を入力したり、ジョイスティックを動かせば目的地に向かうことができる。例えば、ヘリコプターなどの有人機のように、長時間にわたる操縦訓練を受ける必要がないそうだ。
ボロコプターの最初の“搭乗者”そして“パイロット”となったのは、同社代表のアレクサンダー・ツォゼル(Alexander Zosel)氏だった。ツォゼル氏は高度約20メートル前後の高さを、時速24キロで飛行し初の有人飛行を成功させた。少し失礼にあたるかもしれないが、ツォゼル氏はまあまあの巨体である。体重も決して軽くなさそうだ。
「感動的な飛行だった。搭乗した後に事前チェックをしたのだが、おそらくかかった時間は20秒くらいだったと思う。それで飛行準備は終わった。その後、私はレバーを上げただけ。ボロコプターは一気に上昇した。ジョイスティックから手を離して下を見下ろしてみた。すると、地上20〜25メートルまで浮かんでいた。ついにやり遂げたのだが、その事実がまったく信じられなかった」(ツォゼル氏)
イーボロ社のドローンタクシーの性能開発目標は、2人乗り、時速100㎞、高度1981mに到達することだという。まだまだ、道のりははるかに遠いが、今回のテスト成功が大きな一歩になることは間違いない。またイーボロ社は、2年以内にボロコプターを発売、ドローンタクシーの実用化を達成することを目標としている。
バス、タクシーと地下鉄に加え、“空を走る”交通手段が達成されるとなればわくわくする一方、法規制の問題、また何より安全性の追求はこれまで以上に困難に直面するはず。今後のプロジェクトの成否が非常に気になるところだ。また、写真を見た限り機体サイズがものすごく大きいので、着陸する場所探しも難儀しそうである。
ドローンタクシー構想、もしくはドローンに人を乗せて飛ばそうという企業はイーボロ社だけではない。
昨年1月には、中国のドローン専門メーカー・イーハン(Ehang)が、米ラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー2016(CES)で、1人乗りドローン「イーハン184」を披露している。
同機には椅子と小さなタブレットスクリーンのみが搭載されており、スクリーンをタッチして目的地を選択るだけで飛行が可能という設計になっている。積載容量は最大100㎏だ。ただ、イーハンが公表しているドローンの性能については、懐疑的な人も少なくない。実際、CESの会場では試作品と飛行動画のみが公開されている段階だ。
一方、欧州連合(EU)は、昨年春までの4年間、「パーソナル航空機(PAV・Personal Aerial Vehicle)」のひとつである「マイコプタープロジェクト(myCopter project)」と関連し、基礎技術の研究を支援してきた。マイコプターの開発コンセプトは、「地上管制システムの制御なしで、完全または部分的に自律飛行を行い、低い高度で、都市内の家と職場を通勤するための交通手段」である。
世界で動き出しているドローンタクシー構想だが、ゆくゆく次世代の交通手段になりうるのだろうか?個人的には、日本の三和交通がエイプリルフールの日に発表した「ドローンTAXI」も気になるが、世界では本気で構想を実現させようと考えている人たちが、続々と現れ始めているようだ。