米ハッカーがテロ防止用の人口知能アプリ「iAWACS」を開発

ロボティア編集部2016年7月14日(木曜日)

 米ワシントンポストは7月12日、人工知能(AI)を開発するハッカー「ジェスター」(ハンドルネーム)の話題を取り上げた。彼は人工知能で事前にテロなどを予見する、いわゆる「iAWACS」(インターネット+空中早期警報機)の開発者。ハッキングしたオンラインツールを使用し、暴動事件などが起きる危険性がある地域を監視するとともに、その危険性について、地域住民に警告するという自警活動を展開している。

 ジェスターが開発したアプリには、IBMの人工知能・ワトソンが使用されている。機能の概要としてはまず、膨大な量のツイートを監視。特定の地域に関連する、様々な会話内容や画像、ハッシュタグなどを収集した後に、アルゴリズムを利用して、ユーザーの信頼性、暴力性などを分析していく。最終的に、そのオンライン上の雰囲気が、肯定的か、否定的かまで数値で表示されるようになっているという。ちなみに、プライバシー侵害となるが、同アプリでは個別ユーザーのタイムラインまでのぞき見ることが可能だそうだ。

 ジェスターは自分のアプリが映画「マイノリティリポート」に登場する「予知者」と似ているとコメント。収集した情報を利用すれば、犯罪に手を染めようとする人々の手掛かりを事前に把握できると主張する。

 最近では、その人工知能の判断力を訓練するため、大規模な黒人デモが行われたルイジアナ州バトンルージュの事例を学習させたという。米メディアは、そのハッカーの行動は合法的なものではないが、米国の司法当局者は“目をつぶっている”と強調。むしろ多くの司法当局者が、彼のiAWACSがうまく利用できるように、フィードバックすら与えているとも伝えている。

 ジェスターがテロ防止用の人工知能を開発しはじめた背景には、ボストンマラソン爆弾テロ事件があった。当時、米警察は容疑者を追跡する過程で、SNS上の情報や市民の協力を求めた。そこでiAWACSの着想を得たジェスターはアプリを開発。現在、ルイジアナ地域の監視に導入している。

人口知能を使った未来予測に近い分析や速報は、すでに商品化されはじめてもいる。

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 たしかに、そのようなテクノロジーは人々に恩恵をもたらすかもしれない。一方、誰が潜在的な犯罪者であるかなどの判断を、人口知能、ひいてはその基準=アルゴリズムを作る一部の人間が、恣意的かつブラックボックス化してしまえば、潜在犯罪者が大量に生み出されてしまうという危険もある。

 潜在犯罪者の危険性を「犯罪係数」として管理・監視する「シビュラシステム」というコンセプトは、日本のアニメ「サイコパス」でも描かれているが、そのような社会が到来しないとは誰も言いきれなくなる。そのような懸念が杞憂で終わればいいが…。テクノロジーや、リスクを管理したいという治安当局者の欲望が、暴走しないことを願うばかりだ。