垂直農場、食用昆虫、ロボットキッチン...フードテックと食の未来

垂直農場_フードテック
photo by Vincent Callebaut Architects

 また、栽培空間の効率的利用、都心農業など新しい形の農業の在り方も模索されている。例えば、エアロファームス(AeroFarms)は、既存の農地スペースではなく、都心にあるマンションのような形態の「垂直農場(Vertical Farms)」を運営している。この垂直農場の生産性は、一般栽培の30倍、温室栽培の6倍高いとされる。一方、フレイトファームス(Freight Farms)は、古いコンテナをアップサイクリング(upcycling)し、太陽光ではなく、LED照明、センサー、水耕栽培などを活用して、レタス、ブロッコリー、ハーブなどを栽培する都心農業を実現した。

 2015年、米国ではそれら屋内農業(Indoor Agriculture)関連のスタートアップに合計7700万ドルが投資されている。ちなみに、前出のエアロファームスは、2000万ドル規模のシリーズB投資を誘致したそうだ。

 代替食品の開発はどのように進んでいるのか。現在、安全な食材を使用した健康維持、家畜の排泄物など環境汚染と飼育に伴うコスト増加、食糧不足などの問題を解決するために、代替食品の開発が進んでいる。

 昨今、代表的な代替食品として浮上しているのが、食用昆虫(edible insects)だ。現在、その数は1900種以上と推定されている。食用昆虫が注目を浴びる背景としてはまず、昆虫の栄養的価値が見直されつつあるという点がある。加えて、農場におけるコスト・二酸化炭素排出量の削減などにも寄与するという試算のためだ。

 ここ3〜4年の間に、米国では25上の食用昆虫関連スタートアップが生まれている。「Exo」、「Chapul」、「Six Foods」など「コオロギパウダー(cricket powder)」の販売量は、2014年に1万パウンドから、2015年には2.5万パウンドまで増加しているという。なお、それら食用昆虫は、消費者の拒否感を解消するために、粉末やクッキー、バー、油などの形で提供されており、Amazonなどオンラインショッピングで購入が可能だそうだ。

 また植物性原料を加工し、肉に見立てる技術も注目を集める。ハンバーガーのパティと人工チーズを開発したインポッシブル・フーズ(Impossible Foods)、牛肉・鶏肉の質感および味を大豆と野菜で再現したビヨンド・ミート(Beyond Meats)、「ソイレント(soylent)」など“完全栄養食”を開発するローザ・ラボ(Rosa Labs)などへの投資も続いている。

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 科学的レシピの考案、食品の安全性を検査するための機器開発、厨房の利便性向上のためのスマート化・ロボット化も進む。

 まず、科学的レシピの考案という側面で代表的なのは、分子ガストロノミー(molecular gastronomy)の勃興だ。これは、既存の食品の本来の味を守りつつ、最適な温度、溶解、吸収、浸透など化学作用を通じて、食材を新しい形態と質感に変化させる料理学となる。最近は、分子ガストロノミーとVR技術を組み合わせ、“低カロリー食品で豪華な食事を取った気にさせる”バーチャルダイエットプロジェクトも始まっている。

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河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。