ドローン産業の爆発的な成長が進むなか、米国と中国および日本は、世界シェア獲得のための戦いを繰り広げている。
ドローンは軍事分野にとどまらず、撮影や農業、環境保護、災害防災など様々な分野で活用されつつあり、次世代成長産業として注目されている。GoogleやフェイスブックなどIT企業も関連産業のドローン活用技術を研究して久しい。アメリカの防衛産業市場分析会社であるティル・グループによると、世界のドローン市場規模は年平均8%成長し、2022年には114億ドル(約1兆3千億円)に達すると推定されている。
一方、中国・北京市の機関紙・京華時報は今年、ここ数年でドローンの商業利用が爆発的に増えており、世界ドローン市場の総価値(売上高や研究開発費、国防費などを含む)の規模は、2025年710億ドル(約7兆7000億円)に達する見込みだと伝えている。
米国は、軍事分野で蓄積した技術とインフラを土台にドローン産業を牽引している。英国の市場調査会社・INEAコンサルティングによると、2013年の段階で商業ドローンの市場シェアは、米国61%、アジア太平洋諸国20%、欧州17%、中東およびアフリカ2%とだそうだ。一部の専門家は、米国が今後格差を広げ、2020年には世界ドローン市場の70%を掌握するとみている。
米中部に位置するオクラホマは「ドローン産業のメッカ」と呼ばれている。空軍基地の裾野で、ボーイングやロッキード・マーティンなど防衛産業の拠点になったという理由が大きい。軍事用のグローバルホークの整備工場があり、防衛産業従事者だけでも12万人を超える。
ドローンの開発企業は18で、合計2000人以上の技術者が勤務している。そのうちのひとつであるドローン専門研究・開発ベンチャーDIIは、米国防総省のドローンにバッテリー制御技術、太陽電池技術などを供給している。DIIのグルーム・スレイCEOは「オクラホマ州にはドローンビジネスに必要な要素がすべて揃っていて、非常に満足している」と話している。DIIは現在、米国立気象局とともに時速300㎞で飛行する高速ドローンの共同研究を進めている。この地域で頻繁に発生する竜巻研究に使用する予定である。米国は9月に、軍と政府機関にのみ許可してきたドローンに関する規制を開放する予定であり、ドローン産業の発展に一層弾みがつく見通しである。
中国・広東省深セン市は、「ポスト・スマートフォン」の成長分野としてドローン産業に振興策を講じている。深セン市は「中国のシリコンバレー」と呼ばれるほどに、供給者、原材料、創造的人材が豊富である。欧州・エアバスの拠点である天津市をはじめ、航空産業が発達した貴州省、・四川省などもドローン産業を重点的に育成している。
中国DJIが9月10日に公開したZenmuseX5シリーズ
2020年には、中国の無人偵察機市場規模が500億元(約8兆円)に達すると予測されている。中国の代表的なドローンメーカーはDJIである。1000ドルの価格帯のドローンをいち早く発売し、商業用ドローン市場の世界的な雄として浮上した。2011年420万ドルに過ぎなかった会社の売上高は、2013年に1億3000万ドルまで急増。現在、従業員の数も2800人にのぼる。
また、中国・Ekenは1080P HDカメラを搭載した「フライホーク」を携えドローン市場に参入した。これらの中国企業は深センに本部を置いている。中国ドローンメーカー・GDUカンパニーのデザインディレクターであるオーシャン・チョン氏は、「中国には、高性能ドローン開発で競争に乗り出している企業が100社以上にのぼる」とした。
3国の他にも、カナダやフランスなど、世界的に有名なドローン企業を抱える国は少なくない。新産業の市場を獲得する国はどこになるのか。競争は今後一層過熱していきそうである。