中国「EHang(イーハン)」27歳CEO「最終目標は地球上の全ドローンを制御するシステム」

ロボティア編集部2016年12月14日(水曜日)

 世界初の有人ドローン「イーハン184」を世に送り出したドローンメーカー、イーハン社(EHang/億航)のCEO熊逸放氏は、4月21日、中国・北京で開催された「ホビーエキスポチャイナ」の現場で、海外メディアの取材に答えた。

「有人ドローンは危険だって?無人カーよりよっぽど安全ですよ」

 熊CEOはわずか27歳。世界的ドローン企業のトップは、イベント会場に、まるで大学生のような出で立ちで登場したという。2014年4月に二項を設立してからわずか2年で、彼は世界のドローン業界をリードする若き大物となった。

 イーハンは撮影、農薬散布などの用途で使われていたドローンを、交通手段のコンセプトとして発展させることで、新たな境地を開拓したという評価を受ける。現在、世界1位のドローンメーカーDJIの背中を追う企業群は、「低価格」を武器にすることが多い。しかし二項は、コンセプトの差別化をはかり世界でオンリーワンの企業を目指す。今年2月、米経済月刊誌ファースト・カンパニーは、そんな二項を「世界最高の革新企業」に選定している。イノベーションを起こした企業を素早く追撃する「ファーストフォロワー(Fast Follower)」がほとんどだった中国企業から、業界の革新を牽引する「ファーストムーバー(First Mover)」が生まれた事例のひとつでもある。

 イーハンの有人ドローン「イーハン184」は、今年1月に公開。6月には、米ネバダ州でテスト飛行も終えている。イーハン184と一般的な飛行機の違いは、パイロットの免許が必要ないという点。なお、ホビーエキスポチャイナにはその有人ドローンの姿はなかったとされる。

「今年1月に米ラスベガスで開催されたCES2016にイーハン184を出品したところ、観覧客の関心がその製品にだけ集中して、『ゴースト2.0(イーハンの他の製品)』があまり注目されなかった(中略)今回の博覧会でも同じことが起こると予想して持って来なかった」(熊CEO)

 イーハン184の積載可能重量は100kg。最大時速100kmで約23分飛行することができ、自律走行機能も備える。市販予定価格は、最大30万ドル(約3460万円)と予想されている。

 もちろん、イーハン184の安全性に対する懸念も多い。が、熊CEOは「多くの自動車や航空機の事故が部品の欠陥や気象悪化ではなく、運転者のミスで起こる」とし、「操縦する必要がない有人ドローンがより安全である」と自信を隠さない。そして、「狭い道路、数多くの歩行者、自動車などがいる地上とは異なり、空には障害物が少ない」とした。

 熊CEOは、機体に異常が検出されるとすぐに近くの安全な場所に着陸する「フェイルセーフ(fail-safe)機能」、また電源の一部が消失しても、数分間の飛行が可能な機能なども紹介した。加えて、本格運行前には、特定の区間だけを繰り返し運行する一種の観光用ドローンとして使うことも検討しているとした。

 熊CEOは「初めて有人ドローンを企画したとき『狂ったのか』という声も聞いた(中略)ただ、世界のどこにもドローンが飛ぶ地上500mの高さに障害物がある国はない(中略)無人自動車の時代が到来しましたが、なぜドローンタクシーは無理だと思いますか?」(熊CEO)

 熊CEOの最終的な目標は、全世界すべてのドローンを管理できる、統合管制センターを構築することだという。ドローンが人命救助、輸送、テロ防止など、さまざまな機能を実行することができるよう、その運行を管理・制御することができなければならないと主張する。また、単に高性能・高品質のドローンを生産するレベルではなく、ドローンの生態系全般を牛耳るプラットフォームベンダーとして生まれ変わっていきたいと、イーハン社の行く末を語っている。

 いわゆる、飛行型アーバンモビリティについては、世界各国で研究・開発が進んでいるが、イーハン184もそんな試みのひとつと理解できる。今後、どのように実用化されていくのか。安全性、法整備の問題があるだけに、好奇心とともに、細心の注意を持って見守りたいところだ。

photo by ehang.com