ワトソンを牽引したAI研究者がIBMを去る...次の研究目標は「マイクロバイオーム」

ロボティア編集部2017年6月5日(月曜日)

 人工知能・ワトソン(Watson)の開発を牽引してきた科学者がIBMを離脱。その背景に関心が集まっている。

 2017年5月、IBMリサーチ副社長および認知コンピューティング(cognitive computing)部門の最高科学責任者(CSO)であるグルダス・バナバール(Guruduth Banavar)博士が、長く務めあげたIBMを去るというニュースが業界を駆け巡った。

 バナバール博士は最近まで、ヘルスケア、金融サービス、教育など様々な分野に人工知能を適用する業務をリードしてきた人物。マシンラーニングの大家でもある。1995年にIBMに入社し以来、27年間にわたり同社に在籍してきた。

 バナバール博士は今後、ヒューマン・マイクロバイオーム(Human Microbiome)を研究する新生スタートアップ・バイオーム(Viome)に移籍するとされている。新企業での肩書は、最高技術役員(CTO)だ。

 なお、ヒューマン・マイクロバイオームについては、日経サイエンス「Science誌の選ぶこの10年の10大成果:マイクロバイオーム」という記事に、次のように説明されている。

<(ヒューマン・マイクロバイオームとは)人体にすむ微生物相(中略)腸内細菌や腸内フロラ(腸内細菌相)といった言葉は聞いたことがあると思います。これを腸内に限らず、人体すべてに拡張した概念が「マイクロバイオーム」です>

 つまり、人体にある有益な微生物全般、もしくはそれらを使った学問・ビジネス分野という意味になりそうだが、そのヒューマン・マイクロバイオームは、人間の老化や病気、生死と深い関連があるとされ、最近研究が活発に行われている。

 ニューヨーク・タイムズによると、2011〜2015年の間に、マイクロバイオーム関連スタートアップがベンチャーキャピタル(VC)から調達した資金は459%増加。2016年には、9月中旬までの段階で、資金調達規模が6億1600万ドルを超えたとも言われている。

 バナバール博士は「AI関連のマシンラーニング技術を、人間の寿命に大きな影響を与えうるマイクロバイオーム分野に適用することは、新たな機会」と、IBMを去る理由を説明している。

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photo by IBMウェブサイト