「2030年はAI社会到来で賃金上昇し英GDPも10%増」大手コンサルPwCが予測

大澤法子2017年7月12日(水曜日)

 157ヶ国にて展開中の大手コンサルティング企業PwCの英国現地法人は6月28日、AI社会が進展した2030年までの国内総生産(GDP)および個人消費の予測状況について報告した。AIによる単純労働の自動化が進めば、一部の職種がAIに代替され、一方で時代に対応した職種が新たに生み出されることになるが、全体的に労働生産性が向上し、それに伴い賃金が上昇するという。結果、GDPは10パーセント(2320億ポンド)増える見通しだ。

 AI関連製品の生産量が増加すると、AI市場内で価格競争が勃発し、消費者にとって手頃な価格で市場に出回るようになる。一方、企業側は他社製品との差別化を図るべく、AIへの付加価値を検討し始める。そうなれば、AI市場における需要はますます伸びていくことが予想される。

 PwCのエコノミスト、ジョナサン・ギラム(Jonathan Gillham)氏は、今後AIが英国国民に与え得る影響についてこう分析している。

「日常性の高い製品にAIを組み込むことで、製品に磨きがかけられ、パーソナライズされる。そのような製品が安価に購入でき、しかも比較的長期間使用できるとなると、コストパフォーマンスさの良さからAI需要が増幅されるだろう。さらに、単純作業の自動化により労働の生産性は向上し、最終的に賃金が上昇する」。

 AI社会の進展に伴うGDPの増大は世界規模で見られ得る傾向だ。同社は2030年、中国を筆頭に、米国、ヨーロッパ、アジア新興国で高GDP上昇率を記録すると予測している。積極的なAIの投入が見込めない発展途上国でさえも僅かながら上昇するという。

 三菱総合研究所は今年1月、AI社会が普及した2030年の日本における状況を試算した報告書を提出。一般事務や工場内の仕事を機械が代替するようになり、ホワイトカラーを含む雇用者が240万人減少する一方、GDPが50兆円増えるとした。

Photo by Bjørn Erik Pedersen

大澤法子

記者:大澤法子


翻訳者・ライター。1983年、愛媛県生まれ。文学修士(言語学)。関心分野は認知言語学、言語処理。医療・介護分野におけるコミュニケーションに疑問を抱いており、ヘルスケアメディアを中心に活動中。人間同士のミスコミュニケーションに対するソリューションの担い手として、ロボット・VRなどがどのような役割を果たし得るかを中心に追及。

https://roboteer-tokyo.com/about