韓国政府が国内ドローン産業に1200億円投資...「ドローンハイウェイ」計画も具体化

ロボティア編集部2017年7月19日(水曜日)

 韓国政府がドローン産業を先進国レベルに育成するため、中長期発展計画を定める。計画の骨子は、ドローンの源泉技術開発を支援すること、また「ドローンハイウェイ」などインフラの構築を進めることなどとなる。

 韓国・国土交通部は7月18日、翌日にソウル中区の商工会議所で開催される公聴会で、上記内容を盛り込んだ「ドローン産業発展基本計画(2017~2026)」を発表すると明らかにした。

 第4回産業革命を牽引する代表的な分野のひとつとして注目されるドローン産業は、今後、毎年50%以上増大し、2025年には約620億ドルの市場規模にまで成長すると予想されている。米国・EU・中国・日本など先進国は、すでに世界ドローン市場を先取りするための競争に飛び込んでいるが、韓国もこれを追随する構えだ。

 韓国政府の基本計画は、現在704億ウォン(約70億円)規模の国内ドローン市場を10年後までに4兆1000億ウォン(4100億円)規模に成長させること。また、技術競争力を世界5位にまで引き上げ、産業用ドローン6万台の商用化を達成する目標を掲げている。そのため2018年から2022年までの5年間で、約1兆2000億ウォン(1200億円)を投入し、源泉技術の確保に乗り出すとした。以下、韓国政府が掲げたドローン発展計画の概要となる。

・映像・測量・建設・農業・エネルギー・通信など有望分野ドローン市場の研究・開発(R&D)を拡大し、国内ドローンの技術力を先進国の90%水準まで発展させる。

・レジャー・ホビー用ドローンよりも市場規模が大きい産業ドローンの開発に、集中投資する。

・そのために、政府主導の「ドローン公共事業」を展開。5年間で、公共建設、河川管理など多分野に約3000台規模のドローン公共需要を創出する。

・板橋にドローン企業支援ハブを設置し、部品・センサー・サービスなど、多くの産業とドローン産業が融合しつつ、スタートアップがともに相乗効果をもたらすことができるよう産業生態系を構築する。

・国家レベルの「ドローンハイウェイ(高速道路)」をつくる。ドローンが迅速かつ安全に目的地まで移動できるよう、ハイウェイについては①輸送用航空機運航地域(標高4.3㎞以上)②軽量航空機運航地域(標高0.3~4.3㎞)③ドローン運航地域(標高300m以下)などに分けて管理する。

 なおハイウェイは安全性の問題を考慮して、道路・鉄道などの上空を除き、高密集地域・危険施設・軍事施設などは迂回するように設定する。

 加えて国土部は、ドローンハイウェイの設置のために、「ドローン交通管理システム(以下、UTM)の研究」を2021年までに進めると明かしている。UTMは、AI(自律回避)、ビッグデータ(履歴管理)、IoT(ドローン間通信)、ナノ・センサー(超小型識別チップ・マルチセンサー)など4次産業革命の中心的な技術が適用される分野であり、米国など一部の先進国でのみ研究が進められている。

・ドローンの運用に伴う安全・セキュリティ上の問題を解決するために、「ドローン登録制」や「資格・保険」などの制度も用意する。

 先進国レベルと同じく「重量250g以上」の機体所有者に対して登録制を導入するが、モバイルを通じた登録など簡易かつ便利な管理システムを構築する計画とされている。

 ちなみに、既存の重量・営利目的に応じて分けられていた資格制度は、危険度と性能を考慮してより高度化しつつ、リスクが低いホビー用ドローンについては、最小限の安全規制のみ適用していく方針だ。

・ドローンの機能と性能を試験できる空間も用意する。

 韓国政府は2020年までに、全羅南道高興に航空機レベル無人機の性能・認定試験など国がサービスを提供する総合飛行試験場を構築する。また、全国にドローン離着陸場、管制室、整備庫など、試験インフラを備えた専用飛行試験場を段階的につくり、飛行試験、性能試験、環境影響試験など、ドローン性能を評価するドローン安全性認証センターも構築していくとした。

 国土部は今回の計画で、2025年までに約16万4000(製造1万5000、サービス14万9000)が新たに創出され、生産誘発効果20兆7000億ウォン(約2兆7000億円、製造約4000億円、サービス1兆6700億円)、付加価値誘発効果7兆6000億ウォン(7600億円)の効果が発生すると期待している。

 国土部の関係者は、「政府がドローン産業支援のために断片的な政策をひとつにまとめて、中長期対策を用意した(中略)公聴会で関係省庁の意見を収斂し、航空政策委員会の議論を含めて基本計画を確定する」としている。

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