米国と中国の企業がコラボ「ドローン臓器配送計画」発表

ロボティア編集部2016年5月5日(木曜日)

 人間の臓器をドローンで運ぶ計画が浮上している。米バイオテクノロジー企業ラング・バイオテクノロジー(Lung biotechnology)が、中国のドローンメーカー・イーハン(Ehang)と提携、臓器を輸送する計画だと、5日、欧米メディアが伝えた。

 ラング・バイオテクノロジーは人工臓器を製造・提供している企業だ。今回、イーハン側は1000台の臓器輸送用ドローンを、15年間にわたり同社に供給する契約を締結した。

 臓器輸送に使用されるドローンは「イーハン184」。イーハンは今年1月、米ラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー2016(CES2016)で、人を乗せて飛行できるドローン・イーハン184のデモモデルを出展、注目集めた。イーハン184は大人1人を乗せて、時速16〜104kmで飛行することができるというのが、同社の説明となっている。

 イーハンは、ラング・バイオテクノロジー側が開発した再生臓器や、移植用の豚の臓器を輸送することができるよう、ドローンを改造する予定だという。改造されたドローンは、スマートフォンのアプリケーションに入力された経路に沿って、半径16km以内にある、ドローン充電用パッドが備えつけられた病院に、臓器を輸送するという計画となっている。

 人工臓器および臓器輸送用ドローンのコラボは、臓器移植分野に一線を画すものと見られている。ラング・バイオテクノロジー側は「これまで脳死者が寄付した臓器だけを移植してきたので、何千人もの人々が、臓器移植の順番を待ちながら死んでいった」と、その着想の背景とドローン輸送実現のメリットについて言及している。

ehang184_イーハン184
イーハン184 photo by ehang

 ただドローンを臓器配送計画の実現性は不透明だ。まず、ラング・バイオテクノロジーは、人工臓器の安全面での検証を受け終えていない。一部報道によれば、ラング・バイオテクノロジーが、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認受けるまで、まだ何年もかかると見られている。ドローンの性能も問題だ。イーハンは、毎年20万〜30万ドルをドローン開発に投じているが、人を乗せる技術はまだ実用化できるレベルだと証明されていない

 飛行に対する規制もある。人を乗せることができるサイズのドローンは、米連邦航空局(FAA)の承認を受けなければならない。しかも現在、FAAは重量の重いドローンが人々の上飛を飛ぶことを完全に禁止する法案を検討している。

 そのような懸念に対し、ラング・バイオテクノロジーCEO、マーティン・ロスブラット(Dr. Martine Rothblatt)氏は、「臓器移植する病院と人工臓器の生産施設の位置情報を明確に確保し、航空高速道路(Highway-In-The-Sky=HITS)と低高度計器飛行経路(Low-Level IFR Route =LLIR)のような枠組み利用すれば十分可能である」と言及している。

 なお、HITSは航空機が通行する“高速道路”を設置する構想で、2025年以降に開始されるもの予想されている。一方、LLIRは低高度における飛行計画を事前に提出、航空管制機関の指示に従って飛行すること、またその経路の設置を指す。言い換えれば、ロスブラット氏は配送に関するインフラさえ整えれば、実現は可能と見ているということだろう。まだまだ謎の多い有人ドローン・イーハン184の開発動向とともに、結末が気になるニュースだ。