16万人の駐車違反切符をAI弁護士で取り消させた英青年が話題

ロボティア編集部2016年7月27日(水曜日)

 米国で人工知能(AI)弁護士「ロボット・ロウヤー(robot lawey)」を開発し、16万人に駐車違反の罰金(のべ約4~5億円)を出さずに済むようにした英国青年が話題になっている。青年の名前はジョシュア・ブラウダー(Joshua Browder)。年齢は19歳だ。

 1996年にロンドンで生まれたブラウダー氏は、18歳で車の免許を取得した。ところがその後、駐車違反の切符を4回も切られることに。相次ぐ違反に両親も呆れぎみで、「もう勝手にしろ」と罰金を代わりに出すことを拒否した。するとブラウダー氏は、駐車違反の罰則を受けないための“研究”に突入する。

 駐車違反の罰則を回避する基本的な方法は、弁護士を使って抗議レターを送ること。しかし、ブラウダー氏は弁護士に高いお金を出すのが嫌だった。そこで、駐車場のチケットがどのようにして発行されるかを知るために、何百もの政府文書を探して読みこみ、時に情報公開請求をしながら知見を深めていった。

 駐車違反の切符に関する理解を深めたブラウダー氏は、慎重に抗議書簡を書き、当局に送付した。そしてついに、切符を取り消させることに成功する。コツをつかんだブラウダー氏は、家族や友人の違反切符を無効にするため手助けするようになった。

 不条理な駐車違反切符を取り消すというブラウダー氏の情熱は、そこにとどまらなかった。彼は人工知能プログラムを開発して、同じ悩みを抱える人々に役立てようとした。

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DoNotPay.co.uk photo by DoNotPay.co.uk

 ブラウダー氏は、子供の頃からコーディングを学んでいて、コンピュータプログラミングに堪能だった。スタンフォード大学に入学した彼は、YouTubeを通じてマシンランニングなどを身につけ、3カ月間、夜12時から午前3時まで集中的に開発に取り組んだ。わからないことはマシンラーニングの専門家であるスタンフォード大学の教授に直接聞いた。そして、昨年9月に「DoNotPay.co.uk」というサイトを完成させた。

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photo by DoNotPay.co.uk

 同サイトに、自分の状況を対話するように説明していくと、弁護士が書いたような抗議レターを自動的に生成してくれる。当初、周囲の友人は人工知能の性能に懐疑的だった。しかしニュースサイト「ハフィントン・ポスト」に紹介されてからは、信じられないほど多くの人々がサイトを訪問・利用し始めたという。これまで、16万人が同サイトを利用・抗議レターを送り、切符を取り消させることに成功している。取り消された金額は約4〜5億円。その後、多くのメディアがそのニュースを紹介し、ブラウダー氏は一躍、有名人となった。

 ブラウダー氏は現在、同サービスを、ニューヨークやシアトルに拡大している。並行して、フライトが遅れた際、航空会社に賠償を請求する法律文書を自動的に書いてくれるサービスも開発した。また最近では、シリア難民を助けるプロジェクトも開始している。英語が分からない難民が、アラビア語でそのサービスを利用すれば、難民亡命申請書を英語で作成してくれるというものだ。

 ブラウダー氏は、DLD(デジタル・ライフ・デザイン)カンファレンスに参加し、AI弁護士を紹介。経験を通じて感じたことを語った。

 まず、人工知能が今後、熟練した人間の職業と代替される可能性についてだ。また、自分でさえAI弁護士を開発できたので、世界中の優秀なプログラマーが参与すれば、さらに人の役に立つ人工知能サービスを生み出すことできるとも語った。

 第二に、このような人工知能は社会の中で経済的に疎外された人々に役立つというものである。彼はAI弁護士を開発した後、高齢者や障害者から感謝の手紙をたくさん受け取ったという。彼らは主に、配慮の内駐車違反の発行で被害を被った人々だ。これまで、高額な法律サービスを利用できなかった人々が、人工知能を通じて簡単にサービスを受けられるようになる世界が来るはずと、ブラウダー氏は強調する。

 19歳の青年ひとりの力が、数千人にも及ぶ弁護士を代替する人工知能を開発する時代。今後、どのような新しいサービスが登場するのか、好奇心と期待は絶えない。