AIの権威ベン・ゲーツェル氏「人工知能で政治的な腐敗を正せる」

ロボティア編集部2016年10月1日(土曜日)

 人工知能(AI)の世界的な権威であり、米オープンコグ(open cog=人工知能のオープンソースフレームワークを構築するプロジェクト)の会長を務めるベン・ゲーツェル(Ben Goertzel)氏が、海外メディアの取材を受けた。そのなかで、ゲーツェル氏は「偏見や私利私欲のない人工知能が、公正な意思決定を下す時代が来るはず」とした。

 1989年に米テンプル大学の数学博士号を取得したゲーツェル氏は、人間型人工知能制御プログラム「オープンコグニション(Open Cognition)」のソースを公開。以降、世界のAI開発者との共同研究を進めている。

 注目すべきは彼の研究内容。ゲーツェル氏は2年前から、社会的、また政治的な意思決定を合理的に行える人工知能「ロバマ(ROBAMA)」の開発に注力している。この名称は、ロボットと米バラク・オバマ大統領の名前を合わせたもの。名称の裏に「ロボット大統領」という意味がある。ゲーツェル氏は、非理性的な感情に支配される人間の脳の欠点を補える人工知能さえ開発できれば、最も公正な意思決定を下すことができ、かつ不正腐敗がなくなると主張する。

「国民を代表して、社会的、政治的な意思決定を下す彼ら(政治家や官僚)は、専門知識が不足していたり、私利私欲に陥って誤った判断を繰り返している」(ゲーツェル氏)

 なお、ロバマはアルファゴ(囲碁AI)のような、特定の分野のみに特化した人工知能ではなく、人間の心理的、社会的状況などを把握できる汎用人工知能(AGI)だとゲーツェル氏。 2025年までに、完全に意思決定を下すことができるロバマを開発することが目標だとする。

「それまで、法律や政策に関する膨大な分量の情報とアルゴリズムを入力する作業を経なければならない(中略)10年後、私たちは人工知能が牽引する第4次産業革命の時代に生きるだろう」(ゲーツェル氏)

 ゲーツェル氏はまた、「ロバマはSNSやインターネットにUPされた膨大な情報を1分以内に分析し、世論を反映した政策をリアルタイムで提示すことができる(中略)完成すれば、腐敗がない社会・政治的革命を成し遂げることができるだろう」と付け加えた。

 人工知能は今後、政治家の反発や表面的な民意に翻弄されることなく、社会的・政治的に“正しい”政策を打ち出すことができるのだろうか。もちろん、それら人工知能を設計し、物差しを作る技術者、開発者の世界観や価値観も問われるはずである。現段階では、途方もなく難しいプロジョクトのように聞こえるが…。人工知能を取り入れた社会の姿は、今後どう変化していくのだろうか。

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