6月2日に統一アイルランド党の党首に選出されたレオ・バラッカー氏が、6月14日にアイルランド議会の正式な承認を経て、アイルランド共和国首相に就任した。
バラッカー氏はインド人の父親とアイルランド人の母親との間に産まれた。父親がアイルランドに移住した1970年代のアイルランドは、西欧で最も保守的な国のひとつだった。それから38年後、カトリックの教えに忠実だった国で初めて、同性愛者であり、インド人を祖先に持つ、アイルランド史上最年少の首相が誕生することになった。
バラッカー新首相が同性愛者であることを公表したのは2015年。同年はアイルランドが世界で初めて、国民投票により同性婚が合法化されることになった年でもある。
統一アイルランド党の党首に選出され日、大喝采の中、バラッカー氏は次のように述べている。
「今日の私の選出で明らかになったことがあるとすれば、この国には偏見が存在しないという事です。父が新しい家庭を築くために5000マイル離れたアイルランドにやってきたとき、自分の息子が様々な違いを超越してその国の指導者となり、出自ではなく行動で判断されるとは夢にも夢にも思わなかったでしょう。今ではアイルランドのすべての親が子供に大きな夢を抱くことができます」
医師として経験を積んだバラッカー氏は、2004年に地方議会議員として政界入り。その3年後に国会議員に選出さている。2014年にはアイルランド保健相に就任。2016年には社会保護担当相に任命されている。
バラッカー氏を擁立した統一アイルランド党は、主に地方で強い保守基盤を持つ中道右派政党だ。ニューヨークタイムズ紙の報道では、バラッカー氏は統一アイルランド党が「社会的に保守的な見解を持つ人々にも温かい所であるべきだ」と語り、同党の中絶反対派にも手を差し伸べ、進歩派を驚かせたと書いている。
一方、バラッカー氏はアイルランド放送協会に対して、同性愛者であることについて「自分を決定づけるものではありません。その意味では、インド人ハーフの政治家でもなく、医師兼政治家、同性愛の政治家でもありません。それも私のほんの一部なのです」とコメントしている。
アイルランド産業開発庁の日本代表を務めるデレク・フィッツジェラルド 氏は、バラッカー氏の就任について、次のようなコメントを日本の関係者宛てに寄せている。
「6月14日に、アイルランドは新首相を選出しました。バラッカー新首相はアイルランド史上最年少の首相であり、同性愛者であり、インド人移民の息子です。アイルランドは新首相誕生に非常に誇りを持っており、このこと自体が開放的で、多様性を受け入れる国家であることを示しています。我が国は、性別、宗教、肌の色、性的指向に関わらず平等であることを確信しています。こうした我が国の特徴から、多くの技能と才能に恵まれた人々がアイルランドで就労するようになり、また国外で勤務しています。例えば、グーグル社はアイルランドに欧州中東アフリカ統括本部を置き、6000人を超える従業員を抱えますが、その半数は40を超える国々の出身です。我が国の開放性、多様性に加え、若い人口構成(50%が35歳未満)、EUとユーロ圏で唯一の英語国、12.5%の法人税率といった優位性が、きっと日本企業の将来に理想的な投資先となります」
注目の新首相がテクノロジー面でどのような政策を打ち出すか。併せて注目したい。
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