災害用ロボット世界一「KAIST」の研究者に聞くロボット産業の未来

photo by Jonggi Ha

「僕たちは最初から、日本やほかの海外チームのように、さまざまな研究ができる環境にはありませんでした。逆にいうと、大会で提示された目の前の現実的な問題しか解くことができなかったのです。そのため、大会後を見据えて、課題以上の問題を解決することを目標にした“完璧”なアルゴリズムを開発するなどという、アプローチは取りませんでした。目の前にある問題をどう解決するか。その点からアプローチをはじめたのです。もちろん、ヒューボには技術的な批判もありますが、それは理解できます。ヒューボは決して技術が飛びぬけているわけではない。僕らが尊敬する日本の関係者の方たちがヒューボというロボットプラットフォームに足りないところがあると指摘するならば、受け入れ、技術を磨いていきたいと考えています」

 ヒューボ研究チームが、レインボー・ロボティクスというベンチャー企業を運営していることは前述した。今後、ヒューマノイドの他にも、医療用ロボットやサービスロボット用のソフトウェア開発も進めることを検討中だという。イ氏は今後のロボット産業についてどのような考えを持っているのか。率直に聞いてみた。

「10~15年先を含むロボットの話をするならば、僕はこう考えています。『ロボットはわれわれが定義した問題だけを解決することができる』と。実際、産業用ロボットにしろ、手術支援ロボットにしろ、また掃除用ロボットにしろ、何かに特化した、つまり人間が問題をできた領域だけで成功を収めています。正直、僕は家庭用ロボットなどソーシャルロボットが、ロボットと呼べるかどうかには懐疑的です。スマホと何が違うのかなと。ソーシャルロボットに搭載されているアプリケーションのなかには、本当にロボットができるのかと疑ってみたくなるものもあります。ロボットに無理やりそのような機能をつけてみましたという風に見えなくもない。いずれにせいよ、大事になるのはロボットで何を解決するかという『問い』をまず定義することではないでしょうか」

 なお余談だが、アメリカでは次のような話もあった。義手を開発するベンチャー企業・オープンバイオニクスは過去に、ウォルト・ディズニー・アートチームとタイアップ。3Dプリント技術を使い、『マーベル』シリーズ、『アナと雪の女王』、『スターウォーズ』ら人気キャラクターのロボットアームをつくり、手を失った子どもたちに寄贈するというキャンペーンを行ったことがある。そのロボットアームは、医療器具を嫌う子どもらのリハビリにも効果を発揮した。

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。