【ドローン空撮】不慮の墜落を回避!機体選び&メンテナンスが肝

十田 一秀2016年8月18日(木曜日)

 個人的な趣味であれ、ビジネスであれ、ドローンを飛ばす際になによりも気をつけなければならないことがあります。ドローンに触れたことがある人なら一度は経験するであろう、墜落です。機体が破損するならまだしも、人に衝突すれば大きな事故に。ドローンは一見軽そうに見えますが、海外では衝突事故で大きな怪我を負ったひとたちの例が、続々と報告されはじめています。

 私自身、ラジコンヘリコプターを使用した写真撮影などの業務を13年ほど続けていますが、墜落に対する恐怖は以前より減りました。その理由としてはまず、センサーによる自動安定技術が向上したことで、機体そのものが落下しづらくなってきたというテクノロジー面の事情があります。加えて、オペレーションを続けるうちに、墜落を防止するための知識も増えてきました。なぜ、機体が墜落するのか。そのスタディーケースが増えてくるにつれ、事前に準備できることが増え、おのずと恐怖心を克服することができるようになったのです。

 墜落にはいろいろな要因があります。例えば、バッテリー不良、電波・磁場の影響を受ける、操縦ミス、機体能力を超えた飛行など。これらが理由で墜落することを防ぐ場合は、「運用の仕方」やオペレーション方法を上手く計画することが重要になってきます。一方、動力部品や電子部品が原因となり墜落するのを防ぐためには、機体の「メンテナンス」に注意を払う必要があります。

 以前は業務にシングルローターのラジコンヘリコプターを使用していました。シングルローターヘリはサーボモーターによる機械的な制御がメインになっています。その多くは消耗品です。また動力用のモーターやアンプ、サーボモーターももちろん消耗品です。これらの部品を定期的に交換して、安全性を保とうと心がけていました。

 数年前マルチコプターが登場し、導入・運用を始めましたが、同様な考え方で消耗品を定期的に交換し、安全性を保とうと考えておりました。ただ、シングルローターとマルチコプターには少し違いが。マルチコプターの要はフライトコントローラーで、飛行の安全はこの部分の信頼性に大きく依存しています。

ドローン_十田_KELEK

 一年ほど前、ある会社のフライトコントローラーをメインで使用してマルチコプターを飛行させていたところ、ホバリング中に突然機体がひっくり返り、墜落してしまいました。フライトコントローラーは単体で販売されているものでしたが、それに個体差=初期不良があったのです。(このときはIMU=コンパスやジャイロなどが入ったセンサーの不良でした)。

 それまで数ヶ月間、テスト飛行を何度も行い、異常も無く飛行していました。が、その日突然症状が現れました。同じフライトコントローラーを使用していた方々からも、同様に初期不良による不具合があったというお話を、後から耳にしました。そのドローンが急に反転し墜落する症状は「フリップオブデス」と呼ばれています。また、このフライトコントローラーには詳細な飛行ログ(センサーやモーター、アンプのログ)を保持する機能が無く、明確な原因が特定できない例も多数あります。

 そうなると、定期的に部品を交換しても、初期不良などにより安全が保てないということになってしまいます。初期不良の可能性のあるものを業務で使用するのは非常に怖く、他社の機体を導入することにしました。

 新規で導入した機体の会社は、フライトコントローラーを含め全て自社で製造しており、負荷や振動をかけ初期不良を事前に低減させる「バーインテスト」、「振動テスト」、製造者が実際にフライトさせてチェックする「フライトテスト」を経て出荷しています。

 以前と比べ、メンテナンスする項目が減り、代わりに詳細な飛行ログを確認出来るので、変化をチェックするという手法に変わりました。もちろん定期的にメーカーにて詳細なチェックもしてもらいます。

 現在、私自身はそれに加え、自社の運用マニュアルに沿って、飛行場所の安全状況やバッテリーなど消耗品の状態を、墜落防止のためのチェック項目として事前に確認するようにしています。

 ドローンは空を飛ぶものなので、墜落の危険は偏在しています。とはいえ、一度の墜落が招く損失(事故のリスク、ビジネス上の信頼の喪失などなど)は、とても大きなものです。ドローンが墜落させてしまう原因に常に気を配りながら、オペレーションの精度を限りなく完璧に改善していくことが非常に重要になってきます。

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十田 一秀

記者:十田 一秀


ドローン測量・空撮をてがける有限会社KELEK代表。鹿児島県姶良市出身。30年ほど前ラジコンヘリコプターを使用した空撮測量会社を興した父のもとで空撮測量技術の修業に励み2011年に独立。無人航空機による空撮歴は13年。年間現場数約200件と現場経験豊富なベテランフライヤー。 ・都内マンション眺望撮影 過去1年間68件(2016年8月時点) ・埋蔵文化財発掘調査における撮影や計測 ・熊本地震の災害時の崩壊道路計測 ・砂防調査用計測 ・河川調査用計測 ・テレビ番組撮影 NHKBS『発見!体感!にっぽん水紀行』シリーズなど ※航空法改正による飛行禁止空域及び方法においての『日本全国飛行包括承諾』を取得済み

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