2030年までに200万人失業「ロボット・トラック」出現で変化する欧米労働市場

Jin Kodama2017年6月6日(火曜日)

photo by Spielvogel

 2030年までに、自律走行するトラック=ロボット・トラックが、米国および欧州で200万人の運転手を代替するかもしれないという見通しが報じられた。報道は、国際輸送フォーラム(ITF) の最新の報告書のデータをベースにしたものだ。

 ロボット・トラックという言葉は、運転手がいなくとも自ら目的地まで行くことができるトラック車両を意味する。現在、米国および欧州のトラック運転手は640万人となっているが、2030年までに440万人にまで減少する見通しだという。

 報告書は、ロボット・トラックは安全かつ環境にやさしいだけでなく、企業側に人件費などコストの大幅削減というメリットをもたらすとしている。そのため、労働者の代替問題は不可避で、新たな組織をつくり採用時期を調節するシステムを備えるべきだと指摘した。加えて、ロボット・トラックのための国際規格、道路規制、車両規制案を作成し、車両、ネットワーク技術、通信プロトコルを試験するためのパイロットプロジェクトを推進すべきだともしている。

 ロボットや機械が人間から仕事を奪うという研究報告は、ここ数年しきりに発表され始めている。いずれも、強い説得力を持って人々に受け入れられている。

 例えば、米コーナーストーン・キャピタル・グループ経済研究所は、ロボットによる自動化で、今後10年の間に米国から600~750万人分におよぶ小売関連の雇用が消えるだろうと予想している。現在、米国のスーパーやデパートなどで働く従業員の数は約1600万人だが、そのうち38%が仕事を失うということだ。

 一方、機械は仕事を奪わないとする反論も多い。最近では、Facebookやヒューレット・パッカード社で取締役として在職中のマーク・アンドリーセン氏が、それら懸念は杞憂だと一蹴。5月に行われたITメディア・リコードの年次会議では、「25〜50年スパンでこの手の恐怖が語られてきたが、現実化したものは皆無」と話している。逆にAIを活用した自律走行車は多くの雇用を創出し、考えもつかないような形で人間の生産性を高めてくれるというのが、アンドリーセン氏の主張だ。

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